日本教育学会 緊急セミナー第3弾「世代を超えて原爆投下の想起文化を受け継ぐ──2024年ノーベル平和賞をふまえて」
日時: 2024年12月29日(日) 15時30分から17時30分
形式: オンライン(Zoomウェビナー)※アーカイブ配信はございません。
事前申し込み: 12月27日14時までに、下記のフォームにお申し込みください。申込者にZoomウェビナー参加方法に必要な情報をメールにてお送りします。
https://forms.gle/RpJSwUnBFKuWWcoU9
趣意文:
2024年10月11日、ノルウェー・ノーベル賞委員会は同年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与することを発表しました。同委員会は日本被団協が「目撃証言を通じて核兵器が二度と使われてはならないことを示してきた」(*)ことを評価し、同時に「肉体的苦痛や辛い記憶にもかかわらず、多大な犠牲を伴った経験を平和への希望と誓いに捧げることを選んだすべての被爆者」への敬意を表しました。授賞理由では、核兵器の使用は道義的に許容できないとする「強力な国際規範」(核のタブー)の保持が人類の平和な未来の必須条件としていかに重要であるかが強調されています。その文面からは、「今日、核兵器使用に対するこのタブーが圧力にさらされている」ことへの憂慮と危機意識がこうした主張の背景にあることがわかります。
日本教育学会では、「人類の歴史の今こそ、核兵器とは何かを再認識する」意義があるとするノーベル賞委員会のメッセージを受け止め、この問題を広くかつ継続的に問い直すためにオンライン・セミナーを企画しました。先の授賞理由には、教育にまつわる言葉(educational, educating, inspiring, culture etc.)が頻出しています。そうしたことにすでに滲み出ているように、この問題は教育学にとっても無縁ではありません。その中心にあるのは、地球規模の危機に対して教育に何ができるか、という問いです。本セミナーがノーベル平和賞受賞記念の一過性のイベントとなるのではなく、本学会の内外で問い直しが継続していくための一助となることを願っております。
今回、私たちがとくに注目したのは、原子力爆弾投下に関する「強固な想起文化と継続的な取り組みによって、日本の新たな世代が被爆者の経験と思いを語り継いでいます」という授賞理由の一文です。ノーベル賞委員会は、被爆体験者の証言が「唯一無二」の役割を果たしてきたことを指摘しています。戦後80年が経とうとしている現在、そのような「自らの経験に基づく教育促進の活動」から次世代による記憶継承の試みへの転換期に差し掛かりつつあります。今、「新たな世代」は何を試みているのか。その背景にどのような思いがあるのか。世代を超えて原爆投下の想起文化を受け継ぐことはいかにして可能であるか。原爆投下の記憶継承と平和に向けた活動に参加している若い方々にもご登壇いただき、彼女ら彼らとともに地球規模の危機と教育の問題について考えます。
これまで日本教育学会では、緊急セミナー「ウクラナ情勢を考える──教育学に何ができるか」(2022年3月24日)、そして緊急セミナー第2弾「コロンビア大学の学生デモから見る教員のジレンマと進行する正義の危機」(2024年8月7日)を実施してきました。今回のセミナーをその第三弾として位置づけたいと思います。皆様のご参加をお待ちしております。
* 2024年ノーベル平和賞授賞理由については以下のノルウェー・ノーベル賞委員会のオフィシャルサイトを参照しました。上述の趣意文において鉤括弧で示されている部分は上記サイトにおける授賞理由(英語、ノルウェー語、日本語)からの引用です。ただし、日本語については一部訳語を変更している箇所があります。
The Nobel Peace Prize 2024 – Press release – NobelPrize.org
https://www.nobelprize.org/prizes/peace/2024/press-release/
(閲覧日 2024年11月2日)
プログラム:
開会挨拶 小玉重夫(日本教育学会会長・白梅学園大学学長)
報告1 羽山嵩裕(明治学院大学法学部政治学科2年生)・高田春奈(東京大学大学院・院生/日本サッカー協会常務理事)
羽山さんは長崎県雲仙市出身。高校時代は第24代高校生平和大使および高校生1万人署名活動メンバーとして活動。現在も持続可能な長崎の平和アクション実現に向け、長崎を中心とした1都5県の大学生で様々なプロジェクトに挑戦中です。
高田さんは長崎県佐世保市出身。2020年から22年まで長崎のJリーグクラブV・ファーレン長崎の社長在任中、高校生平和大使との連携協定を結ぶなど、サッカーを通してより多くの人に平和への思いを伝えられるような平和活動を推進されています。2021年から長崎市平和宣言文起草委員会委員。
報告2 持田杏樹(広島市立基町高等学校3年生)
持田さんは基町高校美術部有志が取り組む「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトに参加しています。被爆体験証言者の記憶を絵にする活動を通して感じた平和への思いを、講演やギャラリートーク、交流会などを通して発信されています。
報告3 片山実咲(東京大学大学院・院生/国連軍縮部ユース非核リーダー基金第1期生)
片山さんは核廃絶のための街頭署名活動やユース非核特使として複数の国際会議に参加し、市民の声を届けていらっしゃいます。東京大学大学院学際情報学府の博士課程に在籍し、デジタルテクノロジーを用いた平和学習の新たな方向性も模索されています。
小休憩
指定討論 草原和博(広島大学)
草原さんの専門は教科教育学・社会科教育学。広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)の取組として、中高生を対象に、ヒロシマをめぐる記憶・物語の批判的な継承と対話的な再構築をめざした実践研究を実施されています。草原さんには,三つの報告後のコメントと討論への参加を担当していただきます。
討論
閉会挨拶 山名 淳(東京大学大学院・教授)
司会: 小野明日美(筑波大学人間系・特任研究員)・山名 淳
主催・お問い合わせ:日本教育学会事務局 jimu@jera.jp